【会報71号より】視点:上海の教育事情1

上海で三年間暮らして

 海外で学ぶ日本の子供達

 一中校区 入江  正

平成26年12月、文部科学省から一通の封筒が私のもとに届きました。

中には、「平成27年4月より上海日本人学校浦東校に派遣します。」という内示が入っていました。
正直驚きました。

当時、日本のテレビで放映される中国という国のイメージは、尖閣列島の問題や高まる反日感情、大気汚染がひどく白く煙る街、鳥インフルエンザや毒入り餃子事件など良いイメージはほとんどなく、できれば行きたくはない国の一つでした。

私は小学生600人、中学生500人が学ぶ世界有数の大規模校である上海日本人学校浦東校に派遣されることになりました。

今、世界に95校の日本人学校があります。親の海外転勤に伴って日本人の小・中学生約7万6千人が海外で生活しています。

ご承知のように日本は世界のあらゆる国で経済活動を展開し日本の国を支えています。当然、その親の後ろには海外で暮らさなければならなくなった子供達がいるのです。

例えば、アスンシオン、ジッタ、バンドンなどの日本人学校、これらの学校がどこの国にあるかお分りになりますか?おそらく皆さんがご存じないこれらの都市にも多くの日本の子供たちがいるのです。

日本人学校で学べるのは、海外にいる子供達の4分の1だけです。

残りの子供たちは現地やインターナショナルの学校に通いながらで補習校や独学で日本の勉強をしています。
これはあまり知られていない海外の日本の子供たちの現実です。

海外で日本の子供たちにとって大きな問題となるのは、日本語の獲得です。

おそらく勉強は学校でするもの、言葉も国語の勉強をしっかり教えてもらっていれば大丈夫と思われているのではないかと思います。違うのです。学校で勉強するのは、一日多くて6時間、それ以外、子供達は家庭で会話をし、文字に触れ、書くことを学んでいます。地域や社会の中で新しい言葉を覚え、正しい使い方を体験しながら学んでいるのです。

日本で暮らしているということは、子供達の周りに日本語についての教育環境があるということなのです。海外で暮らすとこの環境が全てなくなります。

これは、大変なことだということが海外にいるとよくわかります。

逆に考えれば、子供たちが見習うべき姿が社会に満ちている。学ぶべき言葉が街にあふれている。これこそが教育の原点であるということが改めてわかります。

社会をつくっている大人全員が地域の子供を育てるという大きな責任を負っていることになるのです。実は、この社会の持つ子供への教育力の大きさを上海で実感しました。

次回はこのお話をしたいと思います。

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